家庭で簡単にプロの味・ほうろく焼き

 

 
 料理というのはどんな料理でもプロの技があらいな。フランス料理、イタリア料理、中国料理、韓国料理・・そして、日本料理。たとえ同じ材料で同じように作ったとしても、なかなかプロの味は出せんと思うんよ。素材を見る目、包丁の使い方、火の通し方、味付け・・。どれひとつとっても相当に知識と経験がいるもんやけん。卵焼きひとつでもプロと素人では違うやろ。
 
 もちろんプロは料理を作ってお金をもらうんやけん、誰が作っても同じような料理を出しとったらプロとはいわん。世の中にはプロじゃない料理人もようけおるけどな。
 
 それが「ほうろく」を使えば、どんなに料理が得意でない人でもプロに匹敵する料理ができるよ。 
 「ほうろく」というのは平たい皿をちょっと大きくしたような陶器のことで、これやと誰がやっても同じように、うまいこと魚が焼けるんよ。
 
 ほうろくは二枚用意する。大きな食器屋さんにいったらおいとると思うけど、高いのを買う必要はないよ。けっこうな強火で焼くけん、割れてしまうことがあるんよ。やけんなるべく安いのがええわい。わしが使いよるんは直径が四十センチほどある素焼きので一枚が千八百円ぐらい。もうひと回り小さいのやと千円ほどである。高いやつになると一枚が五千円ぐらいしとるけん。サイズはコンロにのればどれでもええよ。ほうろくは大きくても全体にちゃんと火がまわるけん。
 
 それともうひとつ肝心の道具が玉石よ。これは園芸店に行けば売っとる。どんなんでもええけど、どうせ焼いてしまうけん、わしは黒いやつを使いよる。一枚のほうろくに玉石を下が見えんぐらいにまんべんなくしいて、さらにもう一層玉石をしく。その上に魚をのせて、もう一枚のほうろくで蓋をしてあとは強火で焼くだけ。
 
 魚を上手に焼くには「強火の遠火」というけど、そんなん家庭のガスコンロじゃあできんやろ。このほうろく焼きなら火の加減は何も気にせんでええし、魚をひっくり返す必要はないけん、魚の身が崩れることもない。煙もあんまり出んよ。
 
 魚は何でもかまんよ。アジ、鯛、サザエ、伊勢エビ、車エビ、大正エビ、タコにイカ・・。安いのでも高いのでも、その素材なりに、最高の味が引き出せる。タコやイカは丸焼きにするんよ。タコなんか、足を広げていかにもタコらしい形に焼けるぜ。普通、家で丸焼きできるような道具はないやろ。これやったら都会の子供でもタコの足が八本あるというのがわかるんやない。なんか、最近の子はタコの足の数も知らんというよ。スーパーでは一本か二本でしか売りよらんけん。
 
 魚に限らん、ほうろくはイモでも卵でもうまいこと焼けるんよ。イモは石焼きいもと同じよ。ホクホクして甘みがよう出らい。卵は白身に弾力があって、黄身はしっとり焼き上がる。わしは卵が好きでな、とくにほうろくで焼いたのはいくらでも食べれてしまう。食べすぎんように気を付けんといけんぐらいよ。
 
 なんでこんなにうまいこと焼けるんかはわしもわからんのやけど、石とほうろくがええ具合に火加減の調節をしてくれて、まんべんなく火が回って、素材の持つええところが逃げ出んのよな。「焼き」と「蒸し」の両方がうまいことできるんかな。
 
 それにほうろく焼きは見栄えがええんよ。焼き上がったらそのままほうろくごと食卓の上に持っていって蓋をとる。焼いた素材の香りがぶわっと出て、部屋中がおいしい香りでいっぱいになる。それだけでも十分な演出やけど、さらに石の上にいろいろな魚やら、エビやら、タコやら、卵やら、野菜やらのっとったら、豪華やろ。ちょっとした感動もんよ。お客さんがきとるときにやったら、大盛り上がりになることは間違いなしよ。そうとうに株が上がると思うぜ。
 
 味付けは基本的に塩だけ。貝類やタコ、イカ、野菜は何もつけんでええぐらい。いろいろ素材を入れるときは、火の通る時間が違うけん、いちばん時間がかかるのから入れて、順々に入れていけばええけん。蓋をあけたらいけんということはないけんな。
 
 火力でちょっと変わってくるけど、だいたいアジ一匹が十五分ぐらい。エビとかは五分。卵も五分ぐらいよ。卵は焼く前に穴を開けといてな。破裂してしまうけん。
 
 魚に火が通っとるかを見るには、指で押さえて柔らかかったら出来上がりよ。半焼けやったら硬いけんな。
 
 ひとつだけ気を付けんといかんのは、ほうろくを濡らさんこと。つまり、洗ったらいけんということぜ。買ってきたときから捨ててしまうまで、水にはつけない。きれい好きな人は料理する前とか後とか気になるかもしれんけど、直接素材には触らんのやけん、ちょっとぐらい汚れても大丈夫よ。紙かなんかで拭けばいい。ほうろくは水を含むと熱を加えたときにすぐに割れてしまうんよ。その代わり、玉石のほうは水につけおきして、しっかり洗う。
 
簡単にプロの味になるほうろくは家庭にひとつおいとくと食事の楽しみが増えると思うよ。
 


2012年9月8日