たかがタコ、されどタコ

 
タコ食べたことないという人はあんまりおらんのやない? タコはいつでもどこにでもあるし、安くて食べやすいけん。ほんでもタコを調理したことはあんまりないやないかな。結構、たいへんなんよ。
 
刺身にする場合。タコの刺身というたら、活きとらんといけんよ。まずまな板に吸盤をくっつけて、外側のぬるぬるネバネバした皮を素早く切るんよ。それはちょっとコツがいらいな。活きとるけん動くわけよ。手早うやらんとな。うわっつらのぬるぬる皮がとれたら次はまな板についとる吸盤とも切り離す。そうしたら白い部分だけになるけん。そいつを薄く薄く切る。切った身を皿にたたきつけたら、まだうにょっと動くよ。
 
そうやってちょっと動くぐらいで食べるんが活タコの醍醐味。ハリのある歯ごたえがあって、ほんでも硬いというわけでもない、独特の食感。噛んだ瞬間に甘みが出てくる。
 
まな板に残っとる吸盤は軽く湯にして刺身に添える。プチプチしとる食感もまたええんよ。
 
ゆがく場合。こっちのほうが大変よ。塩もみをせんといけんのよ。塩の味をつけるわけじゃないぜ。ようは塩でうわっつらのぬるぬるをとるんよ。これがそうとうに力がいる。料理屋やったら若いもんの仕事よ。
 
塩をひとつまみタコにふって、とにかく、もむ、もむ、もむ。粘りが強いけん、体重をかけるぐらいやないといけんよ。もみはじめるとすぐに洗剤を泡立てたみたいに泡が出てくる。もめばもむほど、どんどんどんどん泡が出てくる。塩を多くふれば泡がようけ出てええというわけじゃないきん、ふりすぎんようにな。あんまりふると、それこそ塩がしみて塩辛くなってしまうけん。ある程度もんだら、その泡を水できれいに洗う。それでもまだぬるぬるはとれんけん、今度は塩なしでもむ。また泡がある程度出てきたら水洗い。それを二回くらいやったらええかな。足の股のところはぬるぬるがとれにくいけん、たわしでこすって。それからやっと、ゆがくんよ。
 

 
ゆがくときはそのままやと硬くなるけん、うちではほどほどの硬さにするために酢と酒を入れる。ゆであがりの色をキレイにするためにしょうゆもひとふり。
 
甘辛く炊くときは大根と炭酸をいれる。炭酸と大根にはタコをやわらかくする成分が入っとるんじゃと。炭酸はあんまり入れたら味がえぐうなるけん、ちょっとだけな。
 
硬さは人の好みでええと思うよ、タコはもともと硬いもんやけん。
 
うまいタコを食べたいと思う人はいっぺん、自分で活きとるタコから準備して食べてみたらええわい。タコぐらいのことやけど、ちょっとした感動があると思うぜ。今まで食べとったんは何やったんか、というてな。ものによっては、卵(こ)が入っとるかもしれんよ。タコはどうも年に二回、産卵するみたいなんよ。やけん、卵に当たる確率が高い。産卵するんは個体差があるけん、一ヶ月早く子を持つのもおれば、一ヶ月遅いのもおる。それが二回あるということは、六ヶ月間チャンスがあるわけよ。タコの卵は珍味やけん。
 
タコなんか高いもんじゃないよ。でも、どうしても手間が大変という人は、せめて活きとるタコを仕入れよる店に行ってみて。ほんとのタコに会えると思うよ。
 

 


2014年4月28日