甘い甘い夏のウニ

 
ウニの旬は五月から八月のお盆ぐらいまで。それでも五月いっぱいは身がまだ細くて色もうすいし甘みも浅いんやけど、六月中旬ころからは身が太くなって甘みが増してくる。とくに七月に入ってからのウニは最高よ。オレンジ色がかった黄色が鮮やかになるんよ。ほんとに濃厚で、「このウニはうまい」とわかっておっても、ひと口入れるごとにいちいちその深い味に感心してしまうんやけん。大袈裟にいいよるんじゃないんぜ。ウニは十一月ころに産卵したら身がのうなって、冬の終わり頃から少しずつ栄養をつけて、五月に入ったころにやっと身らしい形ができる。やけん七月に入ったころは最高潮に栄養をたくわえとるんよ。あんまりに甘みが強すぎてほかの魚が食べれんぐらいじゃけん。
 
ウニそのものの味を楽しむのは刺身で食べるのがいちばん。でもウニの甘みがいちばん生きるのはウニ丼よ。ほかほかの白いごはんにごはんが見えんぐらいたっぷりのウニをのせて、わさびをといたしょうゆを少したらして食べる。ウニは寿司もうまいけど、わしはあたたかいそのままのごはんとのほうが相性がええと思う。まあ寿司の場合は酒のあてにもなるし、好みではあらい。
 
寿司といえば、寿司屋には一年中ウニがあるんよ。わしが食べよるんはムラサキウニやけど、こいつはさっきいうたように、お盆を過ぎたら産卵の準備に入って身に白い卵がつきはじめて、秋頃にはそれが苦くて食べれんようになるんよ。産卵後は身がのうなる。もちろん、北海道のバフンウニとか、九州のほうにおるガンガゼウニとか浅瀬におるケンの長い黒ウニとか、ウニにもいろんな種類があるけん、産卵の時期も違って、ムラサキウニとは違う時期に旬のやつを入れとるんやろうけど、それでも一年中はないと思うんよ。わしも何回かほかのウニを試したことがあるけど、正直、わしは夏のムラサキウニがいちばんうまいと思う。
 
うちの店は地元の魚しか扱わんというてやりよるんやけど、実は一回、夏場にウニがきれてしもうて、北海道のウニなら大丈夫やろうと思って仕入れたことがあるんよ。北海道のウニは北海道のウニの良さがあるんやけど、やっぱり違っとった。わしはムラサキウニの粒子が細かくて、表面がからっとしとって、もちろん乾いとるわけじゃなくて、口に入れたときの繊細な舌触りが好きなんよ。それ以来、どんなに漁が悪いときでも、伊予灘以外のウニや魚はいれんと心に決めたんよ。寿司屋の場合はどんなにまずくても、ウニがない、というわけにはいかんのかいな。
 
もうひとつ、ウニのことでいうておきたいことがあるんよ。ウニのことが嫌いという人がけっこうおるんよ。好き嫌いは人それぞれやけん、別に口出しすることではないんやけど、うちのウニを食べたら好きになる人も多いんよ。自慢したいわけじゃないんぜ。
 
ウニはやっかいなことに、上手に包装して冷蔵庫に入れとったら、二十日ぐらい保つんよ。ようもったら一ヶ月ぐらいはなんとか食べられてしまう。でもいくら日保ちがようても、海からあがって一週間以内には食べんと、風味もなにもあったもんじゃない。腐るわけじゃないけど日にちが経つと木箱の臭みと、ウニから出た汁がまじって臭くなってしまうんよ。もちろん、旬をはずれたウニも、食べれたもんじゃない。
 
もし、ウニが嫌いな理由がそういうことなら、もったいなかろ。知ってほしいんよ、ほんとうにうまいときのウニを。やっぱり、生きとっていちばんええんはうまいもんを食べることよ。わしが店をはじめたのも、うまいもんを食べてほしいからやけん。
 

 


2017年8月1日