夏の風物詩・ハモの背ビレ抜き

 

 
 台風の季節がきたら、ハモの出番よ。蒸したうっとうとしい日にむつこい(脂っぽい)もんは食べたくなかろ。そんなときにはハモがいちばん。あっさりした中に甘みのあるハモは酒の肴にもってこいよ。
 
 ハモはアマテガレイやスズキ、コチなんかといっしょで、旬じゃないときと旬のときの差が激しいんよ。旬じゃないときは水っぽくて全然だめ。見た目もおいしくない時期のは灰色がかっとるけど、ええときのやつは全体的に黄色っぽくなって、身がよう肥えとるけんすぐわからい。大きいという意味じゃないよ。サイズは小さくても身がぷりんぷりんしとるということ。体が大きいだけで身が肥えてないのは大味なだけやけん。
 
 ハモはなんといっても、その上品な味わいが魅力よ。ウナギのようなむつこさがないし、アナゴのような臭みもない。ただ、調理が素人には難しいんよな。
 
 ハモが骨がましい魚じゃというのは知っとるやろ。こいつを食べるには骨切りが肝心よ。皮目のギリギリまで小骨があるけん、そのギリギリまで包丁を入れんといかん。しかも一ミリ間隔でな。でもこれは慣れてくればそんなに難しいことではないんよ。千切りといっしょで切れる包丁さえあればできるようになる。
 
 大変なんは背ビレを抜く作業よ。最初に体のぬめりを包丁でとっておく。ぬるぬるしとったら何もできんけん。それからしっぽのほうの背ビレに切れ目を入れて、体のほうをまな板に指で押しつけるようにして、反対の指と包丁で背ビレを持って抜いていくんよ。背ビレは一本一本、ピンが身にささっとるようについとるけん、うまくいけば連なってとれていくけど、途中で背ビレが切れてしもうたり、肝心の骨が抜けんかったりして、なかなかうまくいかん。失敗したら骨抜きで一本一本抜かんといかん。この作業はしめてから五、六時間経ったころがいちばんやりやすいけど、それでも活きのええやつほど身がよう締まっとって難しい。とにかく、ハモに慣れとる人じゃないと、普通の板場でもようせんぐらいやけん。
 
 この背ビレ抜きのやり方はいろいろあって、わしがやりよるこの方法は京都風。身が傷まんように体を開くまえにそれをやるんよ。大阪風は先に開いてから背ビレを抜くやり方。どっちも結果的にはおんなじで手順の違いだけやけど、京都風のほうが大切に扱うけん、時間も手間もかからいな。
ハモの料理はすべてこの背ビレヌキ+骨切り作業から始まる。夏の味を楽しむにはちょっとした苦労がいるんよ。


2020年7月17日