漁師の食卓

これが本当にうまい
魚の食べ尽くし方よ

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伊勢エビ

ロブスターと伊勢エビ

伊勢エビとそっくりなやつが、海外におる
こんなこと、のっけから言うのもなんじゃけど、伊勢エビと思って食べよるほとんどのもんがロブスターかもしれんよ。ロブスターというても、はさみの大きな種類のやつとは違って、伊勢エビとそっくりなやつが、海外におるんよ。

こいつと伊勢エビは見た目ではうりふたつ。色といい、形といい、どこをとっても同じ。若干の違いといえば、伊勢エビは濃い赤か朱色っぽいのが多くて、ロブスターはピンク色っぽいのが多いというぐらい。でも伊勢エビでも白っぽいやつもおるけん。わしらでもよう見分けんぐらいやけん。

ほじゃけん、店でロブスターを「これは伊勢エビですよ」と出されても仕方がないわい。だれもわかりゃせんもん、正直に「これは海外から入ってきた伊勢エビそっくりのロブスターです」というバカはおりゃせない。たまには良心的な人が「ロブスターですよ」と言うてくれるかもしれんけどな。日本人はエビとかカニとかがとくに好きやろ。ええ商売になるんやろな。やけん、海外で捕れたロブスターが活きたままで、大量に安く入ってくるんよ。
ロブスターと伊勢エビを見極めるコツ
ロブスターと伊勢エビを見極めるコツは・・・。カンタンよ。

食べたらすぐわからい。これはどんなに食べ慣れてなかろうが、絶対にわかる。食感も味も、それはまったく別のもんやけん。ロブスターは身がぐったりとしとって、やせとって味もなんもない。何を食べよるんかわからんぐらい。

伊勢エビはというたら、とにかく身がしゃんとしとるんよ。刺身はもちろん、ボイルしようが、焼こうがキメが細かくてしっとりキレイでな。プリンプリンとした食感といい、甘さといい、比べもんにならんうまさよ。

食べるだけじゃ自信がないというなら、肝心要のミソを見たらええわい。ロブスターにはほとんど頭にミソがない。伊勢エビにはどんなに小さいやつでもたっぷりミソが入っとるけんな。

それでも自信がないなら、しょうがないわい。最終手段は値段よ。伊勢エビは養殖がおらんけん、どんなに小さくても本物なら天然もん。一尾五千円以下では食べられん。安い値段で出てきたやつは間違いなくロブスターよ。

伊勢エビはいつ食べてもおいしいんやけど、八月に入ると産卵前で動きまわりよるけん、数がようけあがるんよ。ようけいうても、ひと網十尾かかるぐらいやけどな。魚やったら、産卵前はうまくない時期なんやけど、伊勢エビはほとんど年中、変わらん。身が細くなることもないし、味が落ちることもない。

ほんとに伊勢エビを楽しむんやったら、一キロ級のやつを食べるほうがええぜ。
思い切って食べるなら、大きいほうが絶対に得
伊勢エビは四百や五百グラムの小さいやつでも、大きいのと同じように頭があって、殻もちゃんとあるけん、身はほんとうにちょっぽししかとれん。一キロ級の三分の一ぐらいになってしまうんやけん。
一キロ級やったら、まず、身の半分は刺身にする。なんぼ大きいというても鯛とかに比べたらやっぱり貴重な身やけん、ひと切れずつ、ゆったりと極上の甘みと食感を味わうんよ。伊勢エビは刺身で腹を膨らせるというもんじゃないけんな。半分は天ぷらにする。衣を薄く薄くして、さっと揚げた揚げたてを塩で。もったいないように思うかもしれんけど、刺身だけしか味わわんのももったいないぜ。天ぷらは旨みを逃がさんようにする料理やけん、旨みが凝縮して最高よ。

頭の半分は焼く。香ばしく濃厚なミソはひげの身をほじくってつけたりして、ちびりちびり楽しみながら味わう。ミソの香りだけでも酒が飲めるぐらいよ。

そして頭の半分はみそ汁よ。半分でも十分にミソの風味が豊かでしっかりした味になるんぜ。伊勢エビはこのみそ汁だけでもええという人もおるぐらい、みそとミソが合うんよな。

うちみたいな田舎でも店で出すなら一キロ/一万五千円くらいはかかる。三人で食べたら一人五千円。街のほうではもっと高くてびっくりするかもしれんけど、思い切って食べるなら、大きいほうが絶対に得よ。